ポスター提案「モックを本物の携帯電話と思われて注文されてしまう件」を読んで
携帯電話のモックアップ(模型)を販売されている会社が、本物と間違って購入されるお客様を防ぐ手立てがなく悩んでおられました。そこで、私なりのPRツールを作ってみた、勝手な提案のお話です。
この記事の目次
本物の携帯と間違うお客様が絶えない
はてなブックマークから来てくださった方は、この章は記事を書くにいたった動機説明なので、ご存知のことばかりかと思います。
はてなブックマークの人気エントリーに、携帯電話のモックアップを販売されている、横浜の「平間通信株式会社 保土ヶ谷モックセンター」さんのブログ記事が紹介されていました。
詳しくはぜひ、元記事をご参照いただきたいのですが、この記事を読んで、大変考えさせられました。
一つ目の記事で、お困りを知る
記事は2つあり、最初の記事で、どう工夫して、丁寧な説明を心がけても、本物の携帯電話と間違って購入するお客様が防げないことを嘆いておられました。
さらには、お客様側のミスではあるのに、キャンセル等のクレームが重なったことで評価が落ち、Amazonの出品アカウントが利用停止に追い込まれる事態にまでなってしまったそうです。
こちらが、最初の記事です。
記事は、とても真摯な内容で、このようにも書かれていました。
なにかご意見や良いアイデアなどがございましたら、コメントでもツイッターでも弊社サイトお問い合わせフォームでも、どちらでも構いませんのでお気軽にお寄せいただけますと幸いに存じます。
はてなブックマークにも、沢山のコメントが付いており、同情の声の中にも、もっと出来ることがあるのでは、とアドバイスも目立ちました。
- モックアップという言葉自体が認知されてないのでは
- いくら説明しても、読まない人が多いという現実
- 説明を読まないなら、画像に文字で入れるなどの工夫を
といったご意見が多かったかと思います。どれもうなずけるものでした。
二つ目の記事で、想像以上にお辛いと知る
すると、2つめの記事がアップされたのです。
皆さんから寄せられた意見に「じつはそうできない」事情があるという、補足記事でした。
両方を読むと、この問題がどれだけ根深く、お困りの状態なのかがわかります。
情報を届ける難しさ
私は、印刷物やWebのディレクション、デザイン、広告宣伝にまつわるコンサルティングなどを生業としています。
グラフィックデザインは商行為であり、「情報を、必要な方へ、的確な形で伝える手法を考えること」だと思い、日々仕事をしています。
ですが、どんなに工夫してもベストが出せず、ベターで収まってしまうことがあり、難しい仕事だなと悩むことも多いです。
二つ目の記事を拝読した時、どうしても自分の仕事に寄せて読んでしまい、胸が痛くなりました。
この会社さんのお悩みは、デザイン=情報を伝わる形にする力で、解決できるのだろうか。
布団の中でスマホで読んでいたのですが、そう考えたら、眠れなくなってしまい、記事と皆さんのコメントを何度も読み直しました。
なるほど、と思った意見
印象に残ったコメントや、記事の内容をまとめます。
名称に問題があるのかも
先述したように、名称の問題であることを指摘されている方も多く、モックアップが通じてない、オモチャ、模型、模造品、サンプル、ジャンク品と、代替え案が上がっていました。
それでも、紛らわしい、他の意味を含む…などと、皆さんが知恵を出し合っておられ、私自身が大変勉強になりました。
値段が安いことは「間違い避け」にならないのかも
こんな価格で本物が買えるわけない時点で気付かないのか、という指摘もありましたが、携帯ショップには「(実質)0円」などの売り文句があることを思い返すと、ご年配の方や、携帯の仕組みに明るくない方は、勘違いするのかも、とも思いました。
そもそもモックアップを買う人って?
じつは、モックアップを販売するご商売があることを、初めて知りました。なんのために買うのだろう?と思いましたが、商品説明を読んで納得しました。保土ヶ谷モックセンターさんのヤフオクから引用します。
さて、当商品は携帯電話・PHSのディスプレイサンプル(通称:モックアップ)です。携帯電話の販売店に展示するために製作される非売品です。内部にはおもりが入っており、機械や電池は入っておりません。
用途は様々あるかと思われますが、お子様のオモチャ、アクセサリーメーカー様の開発用、映像製作会社様の小道具、コレクションとしてご好評をいただいております。
また、部品を本物の携帯に流用する行為は弊社では推奨いたしません。部品の取り外しができるか否か、流用ができるか否かのお問い合わせにはお応えができません。
オモチャぐらいしか思いつかなかったのですが、小道具や、携帯アクセサリーの類を設計する際のベースとは、なるほどと思いました。
売り場によりアプローチが違うのかも
二つ目の記事では、同じ間違いが起きる中にも、条件が様々なことがわかりました。
ネット通販だけではなく実店舗でも起きていること。ネットはAmazon、Yahoo!オークション、自社通販サイトのそれぞれに、プラットフォームによる制約の違いがあり、工夫に限界があること。
ヤフオク等では、商品名に文字数制限があり、注意喚起のキーワードを入れきれないことや、業務用途の販売が主だそうで、モックアップという言葉こそ、そういうターゲット層には通じるため、本来のマーケティングに不充分な対応にもしにくい、という補足も見ました。
これは、アプローチをそれぞれに変えないと、最適化にはならないと感じました。
- 本来の用途で探している方(モックで良い)は、どんな言葉でも通じるのかも。本物にはない価格から想像し、納得し、古いモデルでも用途に合えばかまわず、必要なものを選び取れる人たち。
- ネットで間違うお客様は、文字情報を丁寧には見ない傾向がある。文字以外の方法はないか。
- 店舗のお客様は、対面で接客が出来る分フォローしやすそうだが、がっかりされて店の評価が下がるのは辛いし、食い下がられれば対応で疲弊もする。手前でもっとフィルタリングし、少しでもその数を減らせないか。
そんな方向で、考えてみました。
【提案】実店舗用の販売POP
二つ目の記事には、実店舗の販売コーナーの写真がありました。キャプチャを撮らせていただきました。
近くに保育園もありますのでお子様のオモチャにしていただければいいなと思ってやっている
とのことです。
そこで、まずはこの「店頭販売」へのアプローチを考えてみました。
お子さんへのオモチャとして、10円で販売するサービス品。これなら、こう言って良いのだと選んだ言葉は「使えない」です。
「使えない」けれど売ってます、
「模型」として。
一般の方には、理解するのに優しい言葉なのでは、と思います。
とにかく目立つように、真っ赤で目を引く、大きな文字で、ド頭から「使えない」と訴えてみました。
使えないような商品を売るのか!と、思っていただいて構わない。ここがフィルターになるのかと。
そこまで振り切って、実機ではないことをまずお伝えし、それでもOKな方が、10円というサービス品に面白みを感じて、ワゴンを覗いてくださるところまで、を着地点にしました。
驚いた女性の顔と、それを受けてにこやかに種明かしをしてくれる店員さん。イラスト素材はフリー素材「いらすとや」さんからお借りしました。このイラストのおかげで、親しみのある感じにもできたかと思います。
【提案】ネット通販用の注意喚起アイキャッチ
これを、ヤフオクと自社通販サイトに、注意喚起として使えないかと考えました。
テキストでの説明は、ザッと流し見してしまう方には、見落とされがちなのだとも感じます。
ですが商品写真は、複数枚あっても見る可能性は高いと思われます。そこで、必ずこの画像を2枚目、3枚目の画像として掲載してはどうかと考えました。
アイキャッチ画像として定形で入れると、いくつかの商品を見比べている操作の中で、繰り返し目にする機会も増えるため、念を押して印象付けられないでしょうか。
ヤフオクの場合
ヤフオクはスマホアプリ版だと「商品詳細を見る」ボタンをタップしないと、丁寧に書かれた説明文が表示されません。なので、見落としている方が多いと想像します。商品名にモックと入れる工夫が、現状で出来る限りだったとも理解できます。
ならば同様に、写真なら最上部に出るので、まずはそこは見てもらえないかと。
ただし、Yahoo!オークションの規約では、ヤフオク!ストア以外は、商品説明の文字画像はNGとありました。
この程度に商品と半々で、説明画像ではなく商品画像、と拡大解釈してはもらえないでしょうか…(通販サイトからサンプル写真をお借りして作りました。事後報告ですみません)
お節介をお許しください
とても難しい問題に取り組んでみることで、私の勉強の機会になりました。お礼と共に、勝手にこのような提案を、押しつけのようにした失礼をお詫びいたします。
さらに、提案のベースは、はてなブックマークやブログコメントに寄せられた、皆さんの意見がヒントになりました。参考にさせていただき、ありがとうございました。
保土ヶ谷モックセンターさんのご苦労が、少しでも解決できることをお祈りしております。
もし、この提案に現実味があり、お役に立てるようでしたら、素材としてお送りすることができます。内容も仮作成なので、修正が可能です。ご連絡いただければ、対応いたします。
追記
この記事をアップした後に、保土ヶ谷モックセンターさんから3つ目の記事が公開されました。改善の工夫を重ね、テストを続けるとのこと。海外事例なども参考になりました。